この裁判について

2014年12月、名古屋市で殺人事件が起きました。

殺害されたのはAさん(男性)。第一発見者は、Aさんと20年以上パートナーとして生活をともにしてきた内山さん(男性)でした。


Aさんとともに暮らしていた自宅が殺害現場となったことから、内山さんは自宅を手放さざるを得なくなり、精神的にも大きな打撃を受け、仕事も退職を余儀なくされました。


日本には、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律という法律があり、家族を殺害された遺族に対して遺族給付金を支給する制度があります。


これは、犯罪被害者等が再び平穏な生活を営むことのできるように、その経済的な損害の回復、生活保障を行う性質を有するとともに、犯罪被害者等が被った精神的損害に対する慰藉(慰謝)を行うことを、その制度趣旨としています。


つまり、犯罪被害者等が加害者から必ずしも十分な被害弁償を受けられないという現状に鑑み、連帯共助の精神に基づき、犯罪被害者等の経済的及び精神的打撃を社会全体で緩和するという制度が、犯罪被害者給付制度です。


内山さんは、この犯給法に基づき、「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」(犯給法5条1項1号)として、遺族給付金の申請を行いました。


ところが、愛知県公安委員会は、内山さんと被害者のAさんが法律上同性であること等を理由に、遺族給付金を支給しない旨の裁定をしたのです。


しかし、内山さんと被害者のAさんとは、1994年から同居して生活をともにするようになり、2010年11月からは、内山さんのお母さんと一緒に3人で名古屋市内で同居して生活していました。内山さんの勤務先も、加害者も、内山さんとAさんが夫婦として生活していることを知っていました。


Aさん殺害の事件は、裁判員裁判にかけられ、加害者には2016年に実刑判決が下されました。この刑事訴訟の判決でも、内山さんとAさんが「夫婦同然の関係にあった」と認定されています。


内山さんが「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」(犯給法5条1項1号)に該当しないとする理由として愛知県公安委員会が説明したのは、「同性同士だから」というだけです。

これは、当事者の生活実態を見ず、犯給法の制度趣旨にも反する違法な処分です。


2018年7月、愛知県を被告として、愛知県公安委員会のした不支給裁定の取り消しを求める訴訟を名古屋地裁に提起しました。


犯給法上の「配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」(犯給法5条1項1号)に、同性パートナーを含まないとする解釈の適法性を争う、全国で初めての訴訟です。


弁護団員は、岡村晴美(愛知県)、長谷川桂子(愛知県)、堀江哲史(愛知県)、矢崎暁子(愛知県)、倉知孝匡(岐阜県)、中川重徳(東京)、永野靖(東京)、山下敏雅(東京)、大畑泰次郎(大阪)です。(2019年1月現在)


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同性パートナーへの犯罪被害者等給付金の支給を求める弁護団

同性パートナーを殺害された原告が、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律5条1項1号「配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む)」として遺族給付金の支給を求めている、全国ではじめての訴訟です。